はじめに:見逃されがちなお口の“老化”サイン
「最近むせやすくなった」
「食べにくいものが増えてきた」
「滑舌が悪くなってきた気がする」
これらの症状、年齢のせいとあきらめていませんか?
実はそれ、**口腔機能低下症(こうくうきのうていかしょう)**という、お口の機能が少しずつ衰える病態かもしれません。
口腔機能低下症は、2018年に保険診療に導入された比較的新しい診断名です。
加齢だけでなく、生活習慣や全身状態とも深く関係しており、「全身の健康の入口」であるお口の機能を維持することが、健康寿命の延伸につながると考えられています。
このコラムでは、瀬戸市の林歯科医院が、口腔機能低下症の基本知識から予防法まで、専門的にわかりやすくご紹介します。
1. 口腔機能低下症とは?
◆ 定義
口腔機能低下症とは、噛む・飲み込む・話す・唾液を出すなどの口腔機能が、年齢や疾患などにより低下している状態を指します。
一つひとつの変化は軽度でも、複数の機能が同時に低下すると、誤嚥や低栄養、認知機能の低下など、全身の健康に影響する可能性があります。
2. なぜ注目されているのか?〜オーラルフレイルとの関係〜
「フレイル」とは、加齢に伴って筋力や体力が低下し、健康リスクが高まっている状態を指します。
このうち、最も初期に表れる兆候が“オーラルフレイル”=お口の機能の衰えだといわれています。
▶ オーラルフレイルの悪循環
- 歯が抜けたり、噛みにくくなる
- 柔らかいものばかり食べる
- 噛む力・飲み込む力がさらに低下
- 食欲が落ち、栄養不足に
- 筋肉量や免疫力が低下 → 転倒・肺炎・要介護へ
お口の小さな衰えが、やがて大きな健康リスクに繋がる──それが、口腔機能低下症が注目されている理由です。
3. 診断基準:7つの評価項目
林歯科医院では、以下の7項目のうち3つ以上で基準値を下回ると「口腔機能低下症」と診断されます(保険適用)。
評価項目 | 内容 | 方法 |
---|---|---|
① 口腔衛生状態 | 舌の汚れ・細菌量など | 口腔内チェック |
② 口腔乾燥 | 唾液の分泌量 | 唾液量測定・問診 |
③ 咬合力の低下 | 噛む力の低下 | ガム咀嚼検査など |
④ 舌口唇運動機能の低下 | 発音・発話のスムーズさ | 「パ・タ・カ」発音測定 |
⑤ 舌圧の低下 | 舌で上顎を押す力 | 舌圧測定器による測定 |
⑥ 咀嚼機能の低下 | 食物をしっかり噛めるか | チューインガム検査等 |
⑦ 嚥下機能の低下 | 飲み込む力の衰え | 問診・スクリーニング |
4. どんな人がなりやすい?リスク因子一覧
✅ 加齢
→ 筋力や唾液分泌量の自然な低下
✅ 歯の本数の減少・義歯不適合
→ 噛む力・飲み込む力が低下しやすい
✅ 低栄養・口呼吸・生活習慣病
→ 全身の衰えが口腔にも影響
✅ 会話や外出が減った
→ 舌や口唇を動かす機会が少ないと、機能も衰える
5. 口腔機能低下症の症状と兆候
次のような症状が続く場合、口腔機能低下症のサインかもしれません。
- 食事中にむせる・飲み込みにくい
- 滑舌が悪くなった
- よく口が乾く(ドライマウス)
- 歯ごたえのある食べ物が苦手になった
- 食事に時間がかかる
- ガムがうまく噛めない
- 話すのが億劫になった
- 表情が乏しくなった
6. 放置するとどうなる?全身への影響
● 誤嚥性肺炎のリスク上昇
唾液や食べ物が気管に入ることで、肺に炎症を起こす
● 低栄養・フレイル(虚弱)
噛めない→食べられない→痩せる→筋力が落ちる
● 認知症の進行
会話が減ることで、脳の刺激も減りやすい
● 要介護状態に移行しやすい
お口の衰えは、介護リスクを高めるサイン
7. 林歯科医院での対応と取り組み
当院では、口腔機能低下症の早期発見・早期対処を重視しています。
◎ 診断と定期的な評価
- 保険適用の口腔機能検査を実施
- 舌圧計・咀嚼能力検査・唾液検査を完備
◎ リハビリ・トレーニング指導
- パタカラ体操、舌体操、嚥下訓練
- MFT(口腔筋機能療法)による口腔機能回復支援
◎ 医科歯科連携
- 必要に応じて内科医との連携
- 地域包括ケアとの連携(ケアマネジャー・訪問看護)
8. ご自身でできる口腔機能ケア
💡 毎日できる簡単なセルフトレーニング
- パタカラ体操:「パ・タ・カ・ラ」を1日30回ずつ発音
- 唾液腺マッサージ:頬や顎下のやさしいマッサージで唾液分泌を促進
- 噛む回数を増やす:食事はよく噛んで唾液の分泌を促す
- 表情筋トレーニング:笑顔や口を大きく開ける運動を習慣に
9. よくある質問(FAQ)
Q. 口腔機能低下症は何歳から検査できますか?
→ 原則として65歳以上の方が対象ですが、若年層でも気になる症状があればご相談ください。
Q. 自費診療ですか?
→ 保険適用の検査として受けていただけます(条件あり)。
Q. どんな方が検査を受けたほうがいいですか?
→ 高齢の方はもちろん、食べにくさや滑舌の変化が気になる方、誤嚥が増えた方におすすめです。
10. まとめ:口腔機能の“衰え”は予防できる
口腔機能低下症は、「老化だから仕方ない」と思われがちですが、早めの発見とケアで十分に予防・改善が可能な状態です。
瀬戸市の林歯科医院では、地域の皆さまの健康寿命を延ばすため、口腔機能管理に力を入れています。
- 食べること
- 話すこと
- 笑うこと
これらはすべて、人生の質(QOL)を左右する大切な口の機能です。
気になる症状がある方は、ぜひ一度、林歯科医院までお気軽にご相談ください。
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